音楽家の素顔(ポートレイト)

音楽ライター室田尚子と写真家伊藤竜太が、毎回1組の日本人クラシック・アーティストにインタビュー。写真と文章で、その素顔に迫ります。

第9回 音楽とともに生きる、音楽のために生きる 藤木大地(カウンターテナー)

f:id:classicportrait:20181120152449j:plain

 

 藤木大地が2017年、アリベルト・ライマン作曲の『メデア』でウィーン国立歌劇場国立歌劇場にデビューしたというニュースは、近年の日本のオペラ界でも第一級のスペシャルなものだった。何しろ、日本人(かつ東洋人)カウンターテナーとしては史上初の快挙である。しかもただ「出た」だけではない。そのパフォーマンスは現地のメディアから絶賛され、日本国内でもクラシックの世界だけのことではない「社会的ニュース」としてテレビなどメディアを駆け巡った。しかし、「藤木大地」の名前がメディアに取りざたされるのはこれが初めてではない。今を遡ること6年前、2012年の日本音楽コンクールでの「史上初カウンターテナーの優勝」は、クラシック界の人々が文字通り「騒然」となったことをよく覚えている。

 つまり、藤木大地は、常にある種の「新しさ」と共にある。 

 

カウンターテナーとして生きるということ

  

 藤木が、元々の声種だったテノールからカウンターテナーに転向したのは2011年ごろ、ウィーンに留学していた時のこと。テノールとして東京藝術大学で学び、卒業後は新国立劇場オペラ研修所に所属、文化庁の新進芸術家海外研修制度を利用してイタリアへ留学と、「テノール歌手」への道を着々と歩んでいた途中での転向、と、側からはみえる。 

 

 「高校時代に名テノールと呼ばれる歌手に憧れて、イタリアに留学したらこういう声が出るんだろう、と思ってたんですが、実際にはそうじゃなかった。その後カウンターテナーの歌手をたくさん聞いて、“ここならば世界と勝負できるかも”と思ったのが、転向しようと思ったきっかけです。もちろん不安はありましたが、今、自分が持っている声を鍛えれば勝負できるという自信はありました。」

 

 イタリア留学時代に考えていた将来像は、海外の歌劇場、特にドイツの劇場で専属のテノール歌手になること。しかし、カウンターテナーには専属歌手の仕事はない。つまり“フリーランス”だ。「仕事としてやっていく」ならばどんなマーケットがあるか、藤木は徹底的にリサーチする。古楽のマーケットにはカウンターテナーの需要がある。オペラも年に1本ぐらいはどこかの劇場で上演されている。あとは合唱などを歌っていけば「仕事」にはなりそうだ。国際的なマーケットでやっていける。

 

f:id:classicportrait:20181120152652j:plain

  「でも、まさか2017年に自分がウィーン国立歌劇場の舞台で歌っているなんて、この時は想像もしてなかったですけどね(笑)」

 

 「仕事としてやっていく」「一つの道がだめだった場合に切り替えて次の道を探す」という藤木のスタンスは、日本の伝統的な「クラシック演奏家」とは違う「新しさ」を感じる。クラシックは「崇高なる芸術」であり、それを行うものはお金のようなものに煩わされてはいけない、とでもいうように、かつては「霞でも食ってるのか」というような人がクラシックの世界にはゴロゴロいた。いや、今も、アルバイトすらしたことのない音大生は珍しくはない。そんな中で藤木のスタンスは、一見とてもクールな態度にみえるのだが、そのベースには、常に「どうやって生きていくか」という至極まっとうな問いがある。

 

 「実は大学4年のとき、歌を辞めようと思って悩んで、1ヶ月ぐらい漫画喫茶にこもったことがあるんです。その頃、高校の同級生がみんな就職が決まっていくのを見て焦って、辞めるなら今だと思って、無理やり音楽と関係ないことを考えてた。でもやっぱり歌が好きだから、その時はっきりと“歌で生きていく”と決めました。」 

 

 その後も何回かの挫折に見舞われた藤木だが、その都度彼は常に「どうやって生きていくか」を考え、自分にできることを選びとってきた。そうやって「生きて」きた先に、今の藤木大地は立っている。

 

世界で生きるということ

 

 現在、藤木は文字通り「世界と日本を」行ったり来たりして仕事をしている。例えば、今年の1月3日には東京でNHKのニューイヤー・オペラコンサートに出演し、その足でウィーンへ向けて出発。4日の夕方にウィーンに着いて、5日の午前10時にはオペラ『アリオダンテ』のリハーサルに参加していた。そんな藤木に、日本人であることで不利な扱いを受けたことはないか、と聞いてみた。 

 

 「以前、悪役のキャラクターのオーディションを受けた時に、“君は悪役に見えないから”という理由で断られたことがありますが、これは自分という商品価値がニーズに合わなかったからであって、日本人だったからだとは思っていません。日本人だから、アジア人だからということを成功できなかったエクスキューズにするのはフェアじゃない。そのために絶対に必要なのが“言葉”なんです。」

 

 新国立劇場オペラ研修所で学んでいた時代、来日した海外のアーティストと仕事をする中で、メジャーリーガーとして仕事をしたければ、実力以前に言葉というツールは必須だな、と実感した藤木。それ以前にイタリアに語学留学を経験していたこともあり、イタリア語と英語は「まあまあできた」。次はドイツ語、ということで、その後のイタリア留学中には、現地でドイツ語学校に通っていたのだという。成功するために、つまり「生きるために」必要なことは何かを考え、それを身につけるためにすぐ行動に移す。クールな判断力と素早い実行力は、藤木大地の武器のひとつだ。

f:id:classicportrait:20181120153121j:plain 

 「例えば、ヨーロッパで事務所やオーディションの申し込みをしたとして、大抵は返事は来ない。つまり返事がこないのが“ノー”ということなんですね。そこで、返事がこないのは失礼だ、と怒ったり、漠然と待っていても全く自分のためにならない。すぐに次を考えないと時間がもったいないんです。もし僕が切り替えが早いようにみえるのだとしたら、それはこうした経験を積み重ねてきたからだと思います。」 

 

 待っていても何もやって来ない、それならば自分から行くしかない。そうわかってはいても、実際に行動に移すのはとても勇気のいることだ。ましてや、それが言葉も文化も違う外国ならばなおさらのことだろう。

 

 「自分を売り込んだりするのは、すごくやりにくいことですよね。恥じらいもあるし、相手がどう思うかも気になります。でも、自分がちゃんとしていれば、失うものは何もないんです。だから、ダメかもしれないけれど申し込んでみよう、そして呼んでもらえたらすぐにそこに行こう、というのが僕のモットーなんです。」 

 

f:id:classicportrait:20181120153307j:plain

 

これからの藤木大地

 

 すでに2年後までは仕事のスケジュールが決まっているという藤木。「たった2年とはいえ、ようやく生活を気にせず音楽をできる状態になってきたというのは、すごく尊くてありがたいこと」と語る彼だが、歌い手としての転換点となったのは、やはり2017年のウィーン国立歌劇場デビューだという。 

 

 「ウィーン国立歌劇場の舞台に立つことは大きな目標のひとつだったので、それがかなってすごく嬉しかったです。また、そうした体験をしながら、演奏する理由が少しずつ変わってきたのも感じています。それまでは自分のため、つまり、自分がこうしたい、こうなりたいということを考えて歌ってきたのですが、これからは人のために歌いたいと思うようになりました。」

 

 世界中の様々な劇場には、舞台を支える素晴らしいスタッフがいて、オペラを楽しみにしている素晴らしい観客がいる。舞台の上に立つ者は、そうした音楽に関わるすべての人のために歌うのだ、と感じたのだ。

 

 「そのためにも、自分の音楽を磨いていかなければならない。自分の時間を費やして、実績と信頼を積み重ねていく。そうしてはじめて、音楽を聴いてくれる人を増やすことができるのだと思います。」 

 

 「いつか声が出なくなる時がきたら、今度は、後からやってくる誰かがいい演奏をするために支えたいし、そういう場を作りたくなるのかもしれませんね」と藤木大地は笑ったが、この稀有な音楽家の未来を、同じ時代に生きる者としてはずっと見続けていたいと思う。

 

f:id:classicportrait:20181120153351j:plain

 

藤木大地(ふじき だいち) Daichi Fujiki

 

2017年4月、オペラの殿堂・ウィーン国立歌劇場に鮮烈にデビュー。
アリベルト・ライマンがウィーン国立歌劇場のために作曲し、2010年に世界初演された『メデア』ヘロルド役(M.ボーダー指揮/M.A.マレッリ演出)での殿堂デビューは、日本人、そして東洋人のカウンターテナーとしても史上初の快挙で、~「大きな発見はカウンターテナーの藤木大地だった。あの猛烈なコロラトゥーラを彼のような最上の形で表現できる歌手は多くはない」(Der Neue Merker)、「藤木大地はそのカウンターテナーで、説得力のある印象を残した」(Oper in Wien)、「藤木大地は芯のあるクリーミーな声のクオリティと、眩いばかりの音のスピンの力で、モダンオペラの化身となった。」(Parterre)、「藤木大地は難解なヘロルド役をわがものとしていた」(Salzburger Nachrichten)~など、現地メディアから絶賛されるとともに、音楽の都・ウィーンの聴衆からも熱狂的に迎えられただけでなく、日本国内でも、おはよう日本NHK)や国際報道2017(NHK BS1)でとりあげられるなど、大きなニュースとなる。
 2011年、ローマ国際宗教音楽コンクール ファイナリスト。2012 年、第31回国際ハンス・ガボア・ベルヴェデーレ声楽コンクールにてオーストリア代表として2年連続で選出され、世界大会でファイナリストとなり、ハンス・ガボア賞を受賞。同年、日本音楽コンクール第1位。権威ある同コンクールの81年の歴史において、初めてカウンターテナーが優勝したことは、センセーショナルな話題となった。

2013年5月、ボローニャ歌劇場の開場250周年記念として上演されたグルック『クレーリアの勝利』マンニオ役(G.S.デ・リシオ指揮/N.ロウェリー演出)に抜擢されてヨーロッパデビュー。続いて6月にも同劇場でバッティステッリ『イタリア式離婚狂想曲』カルメロ役(D.カフカ指揮/D.パウントニー演出)で出演。本場イタリアの名門歌劇場での計12公演の演唱にて、国際的に高い評価を得る。
 国内では、これまでに小林研一郎、黒岩英臣、井上道義小泉和裕松尾葉子鈴木雅明、高関健、大植英次佐渡裕、藤岡幸夫、沼尻竜典、阪哲朗、下野竜也、園田隆一郎、三ツ橋敬子、田中祐子、鈴木優人ら各氏の指揮のもと、読売日本響、東京フィル、東京響、日本フィル、新日本フィル、神奈川フィル、名古屋フィル、セントラル愛知響、大阪フィル、日本センチュリー響、関西フィル京都市響、兵庫芸術文化センター管、九州響、仙台フィル、群馬響、オーケストラ・アンサンブル金沢、京都フィル、バッハ・コレギウム・ジャパンらの主要オーケストラのほとんどと、オペラ『夏の夜の夢』『リア』『ポッペアの戴冠』や、「第九」カルミナ・ブラーナ」「マタイ受難曲」「メサイア」「レクイエム(フォーレ)」などのオーケストラ作品で共演。また、西村朗、加藤昌則ら各氏より楽曲提供を受け、世界初演を果たしている。
 リサイタルでは、世界的な声楽家たちがこぞって指名する巨匠マーティン・カッツ氏(ピアノ)をはじめ、ギタリスト荘村清志、福田進一鈴木大介大萩康司ら各氏との共演がいずれも絶賛を博している。

2018年は1月に行われたNHKニューイヤーオペラコンサートに5年連続出演したのをはじめ、東京都交響楽団大野和士氏指揮)との「カルミナ・ブラーナソリスト題名のない音楽会テレビ朝日)、読響シンフォニックライブ(日本テレビ)、クラシック倶楽部(NHK BSプレミアム)、ベストオブクラシック(NHK FM)への出演や、ピアニスト松本和将、萩原麻未ら各氏との共演による各地でのソロリサイタルも常に絶賛され、全国からのオファーが絶えない。 
また、10月19日に公開される村上春樹氏原作の映画「ハナレイ・ベイ」の主題歌、10月24日には待望のメジャー・デビュー・アルバム「愛のよろこびは」(ワーナーミュージック・ジャパン)のリリースが決定。

2019年3月にはアメリカの名匠レナード・スラットキン氏の指揮による大阪フィル定期演奏会への出演が予定されるなど、活躍はますますの充実をみせている。
バロックからコンテンポラリーまで幅広いレパートリーで活動を展開する、日本で最も注目される国際的なアーティストのひとりである。
第25回青山音楽賞青山賞受賞。ウィーン国立音楽大学大学院(文化経営学)修了。

藤木大地 | DAICHI FUJIKI OFFICIAL WEBSITE

 

【藤木大地さん 出演情報】

 

◇DUOリサイタル with 福田進一

日時:2018年11月23日(金・祝)

会場:島根県芸術文化センターグラントワ

 

日時:2018年11月24日(土) 

会場:雲南市加茂文化ホール ラメール

 

日時:12月1日(土)

会場:高槻現代劇場

 

◇メジャーデビュー記念 藤木大地カウンターテナー・リサイタル “愛のよろこびは”

日時:12月18日

会場:紀尾井ホール

 

◇藤木大地&鈴木大介 デュオ・リサイタル

日時:2019年1月12日(土)

会場:サンシティホール 小ホール(越谷)

 

日時:2019年1月27日(日)

会場:米子市文化ホール

 

◇古楽最前線!-2018 躍動するバロックVol.5オペラ《ポッペアの戴冠》 

日時:2019年1月19日(土)  

会場:いずみホール(大阪)

 

◇藤木大地カウンターテナー・リサイタル「日本のうたと、その時代 in OSAKA」

日時:2019年2月8日(金)

会場:ザ・フェニックスホール(大阪)

 

◇大阪フィルハーモニー交響楽団 第526回定期演奏会

バーンスタイン:チチェスター詩篇、他

日時:2019年3月22日(金)、23日(土)

会場:フェスティバルホール(大阪)

 

◇東京春祭 歌曲シリーズvol.27

日時:2019年4月13日(土)

共演:マーティン・カッツ

会場:東京文化会館小ホール

 

◇藤木大地カウンターテナー・リサイタル “愛のよろこびは”

日時:2019年4月17日(水) 

共演:マーティン・カッツ

会場:札幌コンサートホール Kitara(小ホール)

 

第8回 その熱で無垢なる者たちをオペラの虜にする 菅尾友(演出家)

f:id:classicportrait:20181023233639j:plain

 

 モーツァルトの『コジ・ファン・トゥッテ』は、観るたびにお尻の辺りがムズムズするオペラだ。2組の恋人がいて、男たちが女の貞操を試すために変装して互いの恋人を口説き落とす。最後に騙されていたことを知った女たちが「誠実さと愛とで償います」と謝り、元の鞘に収まってめでたしめでたし…って、そんなのめでたく収まるわけないやろ!と私は毎回突っ込みたくなる。この、見ようによっては徹底的に女をバカにした作品(タイトルは「女はみんなこうしたもの」という意味だ)を、現代日本の観客、特に若い人たちにどうみせるのか。演出家・菅尾友が現在挑戦しているのは、そういう仕事である。

  

AIという古くて新しいテーマ

  

 「今回の舞台は、日本(らしき場所)にある大学のAI(人工知能)研究所。年配者アルフォンソはその研究所のドンで、フェルランドとグリエルモは若き研究員です。彼らはそれぞれ2人の女の子にフラれて、彼女たちにそっくりなAIを作り上げます。それがフィオルディリージとドラベッラになります。」

 稽古場を見学させてもらったが、フェルランドとグリエルモは常にパソコンやiPadなどのデジタル・デバイスに囲まれているオタク男性、といった趣で、一方でドン・アルフォンソが筋トレに勤しむマッチョ男性であることと見事な対比をみせている。

 

f:id:classicportrait:20181023233825j:plain

稽古場にて。左から菅尾友、市川浩平(フェルランド)、与那城敬(ドン・アルフォンソ)、加耒徹(グリエルモ)

 

 

 

 

 「AIという非常に現代的なトピックを扱っていますが、実は“人形に自分の理想を託す”というのは、『ピグマリオン』や『ホフマン物語』のオランピア、『マイ・フェア・レディ』など昔からずっとあるテーマ。一方で、AIを扱う際に忘れてはならないのが、日本におけるキャラクター・コンテンツの問題です。今、日本のドラマや映画の人気作の多くは主人公がティーンエイジャーだし、アニメや漫画の女性キャラクターは“幼い顔つきなのに胸が大きい”という造形が席巻している。あるいはJKビジネスの隆盛などもあり、可愛らしくて子供っぽいキャラクターとの疑似恋愛の話題が多く見られ、その物語も広く受け入れられています。」

 子供の顔と大人の体を持ったキャラクターとしての「女」に、大人の「男」が夢中になっている現代ニッポンでは、「男が女を試す」物語も「AIに恋した男がAIの女を試す」物語へと変貌するというわけだ。

 

f:id:classicportrait:20181023234435j:plainf:id:classicportrait:20181023234652j:plain

 

 

「自分たちの物語」を作る

 

 菅尾さんはこれまでも、2012年の日生劇場フィガロの結婚』や2015年の同『ドン・ジョヴァンニ』、二期会『ジューリオ・チェーザレ』といった注目すべき舞台を作り上げているが、その演出では常にある種の「読み替え」が行われているのが特徴だ。時には大胆に設定を変えるような舞台もある。例えば今年のザルツブルク音楽祭で上演された、子供のための『魔笛』は、パミーナが誕生日の前夜に見る夢、という設定でドラマが展開していた。こうした「読み替え」演出は、時に保守的な人から批判を浴びることもあるが、それは「作品のコアに行きつくための手段」なのだと菅尾さんは言う。

 「僕自身は“読み替え”という言葉はあまり理解できなくて、自分の作業は“読み込み”だと思っています。ましてや作品を裏切るつもりはまったくありません。音楽とテクストからこれが作品のコアだ、ということを見極め、そこに近づくための手段として演出がある。僕は常に、その作品に内包されたテーマのどこをフィーチャーしたら面白いか、ということを考えています。作品を、博物館の展示のように過去の遺物としてそのまま見せるだけでは足りないと思うんです。例えば『トゥーランドット』なんか、男に強引にキスされてお姫様が愛に目覚めるなんて、現代の感覚ではとても納得できない。でもそれを“昔の物語だから”で終わらせるのではなく、自分と観客の生きる現代の物語としてならどのように成立するのか、ということを考えてみたいんです。」

 今回の『コジ』にしても、世界的に“Me too”ムーヴメントが盛り上がり、女性たちが差別的な扱われ方に対してノーを突きつけている今の時代に、「男が女を試す」という物語をそのままやることはできない、という問題点から菅尾さんは出発している。作品の内面にあるもの(=コア)を「今」というフィルターを通してみた時に何が現れてくるのか。菅尾演出が、一見突飛に見える設定を用いていようとも観るものを納得させるのは、そこに「今」という時代に生きる「自分たちの物語」が描かれているからに他ならない。

 

f:id:classicportrait:20181023234239j:plain

 

 

「オペラ面白いですよ」と言い続ける演出家

 

 父親の仕事の関係でデュッセルドルフに暮らしていた4歳の頃、菅尾さんはオペラに出会った。子供の頃からオペラを観てきた菅尾さんにとって、オペラは「別世界のもの」ではなく、「もっとも親しいエンタテインメント」だった。

 「僕がいつも念頭に置いているのは、オペラのことを知らずに初めて観に来たお客さんなんです。そういう人が観て面白かった、と思ってくれるようなものをつくるのが僕の仕事です。そういう意味では、今回の『コジ』を《ニッセイ名作シリーズ》として中高生のみなさんが観にきてくれるというのが楽しみで仕方ありません。」

 《ニッセイ名作シリーズ》は長年日生劇場が取り組んできた中高生のための鑑賞シリーズで、日生劇場と全国の劇場で無料でオペラやバレエの招待公演を開催している。今回の『コジ・ファン・トゥッテ』も一般公演の他に中高生向けの公演が行われる予定だ。

f:id:classicportrait:20181024000316j:plain

「今回の舞台を観た中高生の中で、例えば次にオペラのチケットを貰える機会があった時に“もう一回行ってみてもいいな”と思う人が増えるということがすごく重要だと思ってます。だから、文句なく面白いものを作りたいし、そこには言い訳や甘えは通用しない。“オペラってこういうもの”という慣例やタブー的なものも、何が本質なのかを改めて自分たちで問い直す作業が必要だと思います。そのプロセスを楽しみつつ、多くのお客様に楽しんでいただける舞台を作っていきたい。」

 インタビューの間中、菅尾さんの瞳からは何か特別なビームが放たれているような、そんな気がしてならなかった。それは、オペラが大好きで、その大好きなオペラの面白さを、ひとりでも多くの人に伝えたいという彼の「熱」だったのだ。その「熱」は触れてもヤケドはしないけれど、あっという間にこちらの心を沸騰させる力を持っている。菅尾友の「熱」は次に日生劇場の舞台で多くの若者と、若者の心を持った大人たちを直撃するだろう。

 

f:id:classicportrait:20181023235030j:plain

 

菅尾 友(すがお とも)

札幌生まれ。幼少期をアメリカ、オランダ、ドイツ等で過ごし、4歳からバイオリンを始める。アメリカ・ミシガン州の選抜オーケストラでコンサートマスターを務めた他、故・山本直純氏らが指導したジュニア・フィルハーモニック・オーケストラや、アジア・ユース・オーケストラのヨーロッパ・ツアーに参加。

18歳で演出活動を開始。ニナガワ・カンパニー・ダッシュ、東京・新国立劇場、ベルリン・コーミッシェ・オーパー演出スタッフを経て、現在はフリーの演出家としてヴュルツブルクドルトムント、ケルン、ベルリン、チューリヒルツェルンザルツブルクオスロプラハルクセンブルク台北、香港、大阪、びわ湖、東京等の劇場や音楽祭で活動中。最近では子どものための『魔笛』(ザルツブルク音楽祭)、『ユグノー教徒』『ニクソン・イン・チャイナ』(ヴュルツブルク歌劇場)、『鬼恋』(香港・世界初演)、『黒船』(ノイケルナー・オーパー・ベルリン)、『フィガロの結婚』『ドン・ジョヴァンニ』(東京・日生劇場)、『ジューリオ・チェーザレ』(東京二期会)、『魔弾の射手』(関西二期会)、『ドン・キホーテ』(びわ湖ホール)、『ノルマ』(プラハ国立歌劇場)、『子どもと魔法』(ケルン歌劇場)等の舞台を演出。

国際基督教大学卒業。08年文化庁新進芸術家海外研修制度派遣、09年ヴァーグナー国際財団奨学生、13年五島記念文化賞新人賞受賞。

 

【菅尾友さん 演出作品情報】

 

 ◇NISSAY OPERA 2018『コジ・ファン・トゥッテ』

日時:2018年11月10日(土)・11日(日)13時30分開演

会場:日生劇場

 

◇関西二期会 第89回オペラ公演『サルタン王の物語』

日時:2018年12月1日(土)16時開演・2日(日)14時開演

会場:兵庫県立芸術文化センター中ホール

 

◇ドルトムント歌劇場『トゥーランドット』

プレミエ:2019年2月9日(土)

 

◇ルクセンブルク・フィルハーモニー 音楽劇『桃太郎』

プレミエ:2019年3月8日(金)

 

◇ヴュルツブルク歌劇場『神々の黄昏』

プレミエ:2019年5月26日(日)

 

 

第7回 白馬に乗ってやってきた、とびきり美しいオペラ歌手 鳥木弥生(メゾソプラノ)

f:id:classicportrait:20180820155359j:plain

 去る6月に豊洲シビックセンターホールで行われた「6人のメゾソプラノたち」と題するコンサートは、メゾソプラノの歌う役柄の多彩さ、幅広さに加えて、メゾソプラノという声種を持つ歌い手たちがいかに演技派ぞろいで、人を楽しませることに長けているのかを存分に教えてくれる企画だった。その中でも、とりわけ陽性の魅力を放っていたのが、鳥木弥生さんである。藤原歌劇団の舞台で知る人も多い鳥木さんだが、そのキャリアのスタートはヨーロッパであり、比較的長く彼の地を活動の拠点としていたこともあって、「日本の歌い手」という枠をはみ出している印象も強い。「実力派」「華やかな美貌」など、様々な形容詞がつく鳥木さんの素顔はいかに。

 

勉強嫌いの本好き少女

 

 「私は石川県の七尾市出身で、姉が2人います。この姉たちがものすごく勉強ができる人たちで、それに対して私は勉強が大嫌い。というか、正確には “先生”という人種が嫌いだったんです。例えば何かしなさいと言われても“やる理由がわからないのでやりません!”って言って、それでいつも悪い成績をつけられていました。ひとりひとり違うのに何でみんなで同じことをしなくちゃいけないんだって反発していました」

 すでにして、この少女時代である。画一的な押し付け教育に反発する鳥木さんだが、しかし一方で大の本好きでもあった。かたわらにはいつも本があった、という少女時代に抱いた夢は…

 「魔女です」

 おお!さすが(笑)考えてみればオペラ歌手も「魔女」みたいなものかも、というのはおいておくとして、魔女に関する本を読み漁りながら、他の女の子と明らかに違うところは他にもあった。

 「女の子ってよく“白馬に乗った王子様に迎えに来てほしい”とか言うじゃないですか。私は“白馬に乗って剣を携えた王子様になりたい”って思ってました。だから、竹を削って剣を作って、親には“馬を買ってくれ”とねだったりしていました」

 実はこの、「女の子ってこうだよね」という世間の「押し付け」に疑問を持つ姿勢は今でも変わっていない。もう少しきちんとした言い方をするなら、「既存のジェンダー規範」に対する懐疑。それが魔女や王子になりたかった少女・鳥木弥生をオペラ歌手の道へと導いていくことになる。

 

f:id:classicportrait:20180820160304j:plainf:id:classicportrait:20180820155652j:plain

 

恩師、エレナ・オブラスツォワのひとこと

 

 「勉強をしたくなくて」石川県で唯一音楽専攻があった県立高校の声楽専攻へと進んだ鳥木さん。その後は、やはり「受験勉強をしたくなくて」武蔵野音楽大学声楽科へと進学。転機はそこで訪れた。武蔵野音大で教えていた往年の名メゾソプラノ、エレナ・オブラスツォワに見出されるのだ。

 「江古田の街を歩いていたらスカウトされたんです(笑)それで歌を聞いてもらって、“あなたは私になる。私のすべてを教える”と言われました。何でしょうね…私は、歌が上手いからじゃなくて性格がいいから気に入られたんだって言ってるんですけれど(笑)」

 もちろん、鳥木さんの歌が下手だったわけはないのだが、オブラスツォワが彼女のキャラクター、というか人間力のようなものを見抜いたことは間違いない。彼女は武蔵野音大を卒業した鳥木さんを、ユーゴ(現セルビア)やロシアなど、東欧各国のツアーに連れ出していく。当時の東欧といえば共産主義は崩壊したとはいっても、まだまだ経済的にも体制的にも厳しい時代。若い日本人女性がホイホイと行っても、生活していけるかどうかすら危うい面もあった。事実、その後オブラスツォワがスカウトした日本人学生は、ほとんどついていくのを辞退していたのだという。鳥木さんも、生活面ではずいぶん苦労したようだが、それでも必死で食らいついてツアーを周り、各地で歌った。だから、「歌手・鳥木弥生」のデビューはセルビアやロシア、ということになる。

 日本を出て行くというとき、オブラスツォワは鳥木さんの両親の元を訪れ、「この子は絶対に世界に出るから」と説得したのだという。

 「その時オブラスツォワは、“全部で世界一になることはできないけれど、何かの役では世界一上手に歌えるようになる”と言ったんです。彼女の予想では、それは『イル・トロヴァトーレ』でした。それと『ウェルテル』のシャルロット」

 シャルロットは、その後フィレンツェで師事したフェドーラ・バルビエリも太鼓判を押した役だ。「あなたはどこかの瞬間で、世界一美しい『トロヴァトーレ』と『ウェルテル』を歌えるはず」というオブラスツォワのひとことが、鳥木さんを、「オペラ歌手」として生きるステージへと押し上げた。

 

f:id:classicportrait:20180820155750j:plain

 

オペラ歌手が天職だと思えた理由

 

 フィレンツェに足かけ7年、その後文化庁在外派遣研修でパリに2年。その間、ヨーロッパ各地でオペラの舞台やコンサートに出演し、華々しい活躍を重ねた鳥木さん。生涯のパートナーと出会って子供を授かったために、2009年に臨月で(!)帰国するが、その後は押しも押されもせぬ第一線の歌手として活躍を続けている。そんな鳥木さんに、「オペラ歌手でやっていこう、と決意したのはいつか」とたずねたら、こんな答えが返ってきた。

 「小さい頃から男尊女卑の思想が許せませんでした。女性だけが“女流作家”“女流◯◯”と言われる。どうしてだ、って憤ってきた。ところがふと、そういえばオペラ歌手のことは“女流歌手”とは言わないな、と気づいたんです。オペラには、すでに作品の中に“女声”で歌うべき役柄が存在している。私はその役柄を“女性として”歌えばいい。オペラ歌手は、女性として、女性にしかできないことを自然にできるんだ…そう気づいた時、これは私の天職かもしれないと思いました」

 魔女に憧れ、王子様になろうとした少女は、「女だから」と役割を外から押し付けられる社会に疑問を抱き続けた。一方で、決して「女であること」を否定もしなかった。そうしてたどり着いたのが、「女である自分がもっとも自然に生きることのできる」オペラ歌手という舞台だったのだ。

 

メゾソプラノ「地位向上」の秘策?!

 

f:id:classicportrait:20180820165146j:plain

 以前にもどこかで書いたが、私自身はメゾソプラノバリトンヴィオラといった、中低音域の音色の方が、極端に高い音や低い音よりも好きだ。だが世間ではどうしても「主役はソプラノ」という感覚が染み付いている。まさに「ソプラノ1番、テノール2番」(メゾソプラノ地位向上委員会の主題歌の歌詞より)なのだ。だが、鳥木さんがいう「メゾソプラノの地位向上」とは、「ソプラノよりメゾの方が偉い」というような単純なことではない。

 「メゾはソプラノよりずっと役のバリエーションが広い。小間使い、おばあちゃん、ちょっとクセのある人…プリマ以外何でも演る。ただ、だからこそ、メゾはキャラクター勝負みたいに考えられているのも事実で、私は、メゾも非常に高い技術を持っているんだということをみせていきたいと考えているんです。本当は叙情的な曲から激しい曲まで色々あるし、それらを歌い分ける技術も持っている。そういうメゾの歌をみせる場を増やしていきたい、というのが『メゾソプラノ地位向上委員会』の使命だと考えています。」

 確かに、先の豊洲のコンサートでは、本当に様々なメゾソプラノの役柄が聴けたし、また6人の歌い手たちも実に個性豊か。決して「メゾ」と一口にくくれないほどの多彩さだった。どうしてもメゾというと「カルメン」一辺倒になりがちだが、実は多彩なメゾの世界を垣間見ることのできる場が増えれば、メゾソプラノの「地位」は「向上」するにちがいない。

f:id:classicportrait:20180820210650j:plain

 「それに、ソプラノが歌っている役の中には、実はメゾが歌えるものがいっぱいあるんです。ミカエラ(『カルメン』)やムゼッタ(『ラ・ボエーム』)なんか、これからちょっとずつ奪っていこうかと…(笑)」

 真に技術のあるメゾソプラノ歌手をもってすれば、音域さえ合えばこうした役を歌うことはそれほど難しくないのかもしれない。「えー、でもミカエラは清純な乙女でしょ?メゾだとちょっと強すぎない?」と思ったあなた。それは、これまで私たちはそういうミカエラしかみてこなかったというだけだ。もっとも重要なのは、「その人の声の質にキャラクターがあっているかどうか」ということである(ソプラノ歌手でも、ただ高い音が出るからというだけの理由で声質にまったく合っていない役を歌って声を壊してしまうケースがある)。

 「かつてジェシー・ノーマンはこう言いました、“声種というのは想像力の欠如です”。みんなが持っている、“このキャラクターはこういうもの”という固定したイメージをどんどん壊していけたら最高です」

 古臭い規範に敢然と反旗をひるがえす「白馬に乗ったメゾソプラノ」の姿が、あなたにも見えるだろうか。

 

f:id:classicportrait:20180821073752j:plain

 

鳥木弥生(とりき やよい) Yayoi Toriki

ロシア、セルヴィアなど東欧各地におけるリサイタルで活動を開始。
第1回E.オブラスツォワ国際コンクールに入賞し、マリインスキー歌劇場において、G.ノセダ指揮同劇場管弦楽団と共演。
日本では岩城宏之指揮、オーケストラ・アンサンブル金沢の新人登竜門コンサートを経て同オーケストラ定期公演、東京公演においてファリャ「恋は魔術師」でデビュー。
フィレンツェ市立歌劇場オペラスタジオ、及びF.バルビエーリ、W.マッテウッツィの元で研鑽を積み、ヨーロッパでもブッセート「ヴェルディの声」など、数々の国際コンクールに入選、入賞。
02年フィレンツェ市立歌劇場公演「ジャンニ・スキッキ」(R.パネライ主演)ツィータでオペラデビューの後、ルッカ、ピストイアでのプッチーニ「外套」フルーゴラ、クレルモン=フェランでのビゼー「ジャミレ」主演、バルセロナ他でのプッチーニ蝶々夫人」スズキなど、各地でオペラ公演やコンサートに多数出演し現地メディアでも好評を得る。
07年度文化庁派遣でパリへ。エコールノルマル音楽院オペラ芸術科のディプロマを最高位で取得。また、名指導者として知られるコレペティトゥール、J.レイスよりフランスオペラを中心としたレパートリーを教授される。
レオンカヴァッロ「ラ・ボエーム」ムゼッタ、ビゼーカルメン」題名役、プーランクカルメル会修道女の対話」マリー、ヴェルディイル・トロヴァトーレ」アズチェーナ、ベッリーニ「カプレーティ家とモンテッキ家」ロメオなどのオペラに加え、ベートーヴェン「第九」「荘厳ミサ」、 ストラヴィンスキー「プルチネッラ」、フォーレペレアスとメリザンド」、ヴェルディ「レクイエム」などオラトリオやコンサートのレパートリーでも、数々の著名な指揮者、オーケストラとの共演で活躍している。
笈田ヨシ演出「蝶々夫人」「アルベルト・ゼッダスペシャルコンサート」など、出演舞台の放映も多数。
2015年「岩城宏之音楽賞」受賞。
http://yayoitoriki-mezzosoprano.hatenadiary.jp

 

【鳥木弥生さん 出演情報】

 

◇「まだ何も決まってないコンサート」

日時:2018年11月10日(土)14:00開演

会場:国分寺市いずみホール

 

◇「銀座オペラ・ガラコンサート」

日時:2018年11月16日(金)19:00開演

会場:ヤマハホール

 

◇G.ヴェルディ『ファルスタッフ』

日時:2018年12月6日(木)・9日(日)・12日(水)・15日(土)

会場:新国立劇場

第6回 天才ピアニストは愛の夢を見たか 反田恭平(ピアノ)

f:id:classicportrait:20180724170953j:plain

  圧倒的なテクニック、惜しみなく溢れだす熱、そして煌めき変化する音色。この23歳のピアニストが、なぜ、人々を惹きつけてやまないのかは彼のピアノを聴けばわかる。だが、かつていた、そして今現在も居並ぶ数多の天才ピアニストたちと反田恭平との間には、何か「違い」がある気がしてならない。それは何なのか。「新しい時代の寵児」といって片づけてしまえない、何かしら音楽家にとって本質的な部分に関わるもの。それを知りたくて、2度目の全国ツアー直前の反田恭平さんにインタビューを申し込んだ。

 

 天才少年が音楽に目覚めたとき

 「今年のワールドカップに出たかったんですよね。」

 1994年生まれのサッカー少年は、23歳の夏のワールドカップに出場する夢をみていた。だがその夢は、11歳、試合中に怪我をした時についえる。手首の骨が折れる音、その後の信じられないほどの痛みに「この仕事は無理だ」と思った。そして「痛くない仕事」を考えた結果、4歳の頃から「遊びで」弾いていたピアノを選ぶ。

 「その時までピアノは趣味でした。ただ音が出るのが面白かっただけで、コンクールに出ても『奨励賞』止まり。何人か審査員の先生に声をかけていただいたこともあるんですが、何しろその頃は音楽の世界のことも知らなかったので、母も自分もサッカーがあるからと断ったりしていました。」

 プロの審査員が声をかけたのは、少なくともただの「ピアノのうまい子」以上のものを見出したからに違いない。実際、サッカーに没頭しながらも「小4か小5の時には『幻想即興曲』を、小5ではショパンエチュードを弾いていました」というのだから、やっぱり「天才少年」ではあったのだ。しかしそのままでは、これまで綺羅星のごとく現れては消えていった「凡庸な天才少年」で終わっていたのかもしれない。

 

f:id:classicportrait:20180724172327j:plain

  サッカー選手という夢を諦め、ピアノに「転向」した11歳の反田少年は、ひとまず「家から一番近かった」桐朋学園大学附属子供のための音楽教室に通い始める。そこで、1枚のチラシが目に飛び込んできた。

 「指揮者の曽我大介先生による夏の指揮者体験のワークショップのチラシだったんです。面白そうだな、と思って参加しました。最終日に受講生がオーケストラを指揮するという企画があって、モーツァルトアイネ・クライネ・ナハトムジーク』、ブラームスハンガリー狂詩曲』、チャイコフスキー白鳥の湖』の中から選べたので僕はチャイコフスキーを選んで、いざ本番で指揮棒を振り上げた瞬間に金管楽器がワッと鳴って、それで世界が変わりました。」

 誰にでも訪れる「世界が一変する」瞬間を体験した反田さん。指揮者になりたいと考えた彼は、曽我大介氏にどうしたらなれるか、とたずねる。ピアノを弾いていると聞いた曽我氏は「それなら、まずはピアノをある程度極めて、それから指揮者になったらどうかな」と答えた。

 「それで今に至ります。」

 

f:id:classicportrait:20180724171814j:plain

 

「ピアニスト」とは名乗りたくない

 「だから、現在ピアニストとして活動できているのはありがたいですが、僕はここにとどまるつもりはないということはお伝えしておきたい。」

 はっきりと言い切った反田さんの顔を改めて見つめる。視線や声の響きに応じて変わる表情は、とてつもなく理知的な印象だ。音楽の森の中を夢を抱いて彷徨う若者、というよりも、地図と磁石を片手に緻密な計算を重ねながら進む冒険者、というような。

f:id:classicportrait:20180724171500j:plain

  桐朋女子高等学校在学中の2010年に日本音楽コンクール優勝。その後ミハイル・ヴォスクレセンスキー氏の推薦により2013年ロシアに留学。2016年にはサントリーホールでデビュー・リサイタルを開催、チケットはソールドアウトし追加公演も含め3000人を超える動員を記録する。2017年には初の全国ツアー、全13公演はすべて完売。「題名のない音楽会」や「情熱大陸」でも取り上げられる、いま、もっとも旬のピアニスト。それが「反田恭平のプロフィール」なのだが。

 「ピアノを弾いているだけなのに、音楽を知っていますというような顔をしたくないんです。ピアノを弾いて、かつ室内楽も知り管弦楽もオペラも全部勉強して、その上でピアニストと呼ばれたい。それならばそう呼ばれることに価値があると思うんです。」

 11歳でショパンエチュードを弾いていた天才少年は、指揮者を目指して音楽の扉を開き、二十歳を超えて押しも押されもせぬ「ピアニスト」になった。だが、その瞳はどこかもっと遠くを見据えているようだ。彼が、最終的にたどり着くべき場所はいったいどこにあるのか。

f:id:classicportrait:20180724174350j:plain

 

楽家であること、人として生きること

 「よく人は、人生にはそこここに選択肢があるといいますが、僕はそうは思わない。もちろん、何か問題にぶつかった時に気持ちが交錯して答えが出にくくなることはあると思う。でも、最後には必ず決断する。一つを選ぶ。最終的にどれか選ぶということが人生、という価値観です。例えば、もし明日事故にあってピアノが弾けなくなったとしたら、僕は、自分の人生はそういうものだと思うということです。」

 高校時代、作曲の先生が「その日最後に出した音に後悔がなければいい」と語ったそうだ。「悔いなく練習して悔いなく生きる、ということが、今でも指針になっているのかもしれない」という反田さん。だから向き合う。考える。そして決断する。選び取った人生は、幸せだろうか。

 「音楽家がいちばん幸せなのは、好きな人に、好きな曲を、好きなタイミングで弾く時だと思います。今はコンサート・ピアニストとして人の前で弾く仕事ですが、ずっと先では、僕の音楽を聴きたいと思うたったひとりの人のために弾く人生があればいいなと思っています。」

f:id:classicportrait:20180724172746j:plain

  燕尾服を着てステージに上がり、スポットライトを浴びる。美しい音楽を奏でて大勢の人を虜にする。誰もができることではない。選ばれた、一握りの才能ある人にだけ与えられた特権である。その特権を十分に意識しながらも、反田さんが立っているのは、誰のものでもない自分だけの「人生」だ。彼のピアノからきこえてくる「音楽家にとって本質的な部分に関わるもの」とは、反田恭平という「人」が生きている「時間」の大切さ、なのかもしれない。だからこそ人は、彼のピアノを聴きたいと願う。その「時間」を共有することで、聴き手もまた、自分自身の人生の「時間」を感じることができるから。

 

 「僕は、一人でも聴きたいと思ってくれる人がいるならピアノを弾き続けますよ。それが僕の活動の源です。」

 

f:id:classicportrait:20180724173942j:plain

 

反田恭平(そりた きょうへい) Kyohei Sorita

1994年生まれ。2012年 高校在学中に、第81回日本音楽コンクール第1位入賞。併せて聴衆賞を受賞。2013M.ヴォスクレセンスキー氏の推薦によりロシアへ留学。2014チャイコフスキー記念国立モスクワ音楽院に首席で入学。

2015年イタリアで行われている「チッタ・ディ・カントゥ国際ピアノ協奏曲コンクール」古典派部門で優勝。年末には「ロシア国際音楽祭」にてコンチェルト及びリサイタルにてマリインスキー劇場デビューを果たす。

2016年のデビュー・リサイタルは、サントリーホール2000席が完売し、圧倒的な演奏で観客を惹きつけた。また8月の3夜連続コンサートをすべて違うプログラムで行い、各日のコンサートの前半部分をライヴ録音し、その日のうちに持ち帰るというCD付プログラムも話題になる。3日間の追加公演も行い、新人ながら3,000人を超える動員を実現する。

20174月には佐渡裕指揮、東京シティフィル特別演奏会の全国12公演のソリストを務め全公演完売の中、各地でセンセーションを巻き起こす。6月にはNHK交響楽団との現代曲への挑戦し、初の全国リサイタル・ツアー13公演は全公演完売のうちに終了した。

デビューから2年、コンサートのみならず「題名のない音楽会」「情熱大陸」等メディアでも多数取り上げられるなど、今、もっとも勢いのあるピアニストとして注目されている。

現在、ショパン音楽大学(旧ワルシャワ音楽院)にてピオトル・パレチニに師事。また、桐朋学園大学院大学にて修士号取得の準備をしている。

 

【反田恭平さん 出演情報】

 

◆反田恭平ピアノ・リサイタル全国ツアー2018-19

7/21(土)14:00     仙台 仙台・電力ホール 完売!

主催:仙台放送/イープラス/日本コロムビア

 

7/22(日)14:00     福井 ハーモニーホールふくい 小ホール 完売!

主催:福井放送/イープラス/日本コロムビア

 

7/27(金)19:00     岩手 北上さくらホール 大ホール 

主催:岩手朝日テレビサンライズプロモーション東京

共催:一般財団法人北上市文化創造

 

7/28(土) 14:00     青森 リンクモア平安閣市民ホール 完売!

主催:リンクステーションホール青森/イープラス/日本コロムビア

 

7/29(日)14:00     筑波 つくばノバ 完売!

主催:(公財)つくば文化振興財団/イープラス/日本コロムビア

 

8/4(土) 15:00     長崎 アルカスSASEBO 中ホール 完売!

主催:アルカスSASEBO/イープラス/日本コロムビア

 

8/5 (日) 14:00     山口 秋吉台国際芸術村 完売!

主催:公益財団法人山口きらめき財団 秋吉台国際芸術村/イープラス/日本コロムビア

 

8/10(金)19:00     静岡 アクトシティ浜松 中ホール  完売!

主催:静岡朝日テレビサンライズプロモーション東京

後援:(公財)浜松市文化振興財団/中日新聞東海本社

 

8/11(土)15:00     秋田 秋田・アトリオン音楽ホール 完売!

主催:秋田朝日放送事業部/ープラス/日本コロムビア

 

8/18(土)14:00     山形   山形テルサ

主催:さくらんぼテレビ仙台放送/イープラス/日本コロムビア

 

8/19(日)14:00     長野 長野市芸術館 完売!

主催:テレビ信州/イープラス/日本コロムビア

 

8/25(土)14:00     島根 松江市総合文化センター プラバホール

主催:松江市総合文化センター プラバホール/イープラス/日本コロムビア

 

8/26(日)15:00     広島 三原市芸術文化センターポポロホール 完売!

主催:広島ホームテレビ/イープラス/日本コロムビア

 

8/30(木)19:00     高知 高知県立県民文化ホールグリーンホール 完売!

主催:高知県立県民文化ホール/RKC高知放送サンライズプロモーション東京

 

9/1(土) 熊本 市民会館シアーズホーム夢ホール(熊本市民会館)

主催:熊本朝日放送/イープラス/日本コロムビア

 

9/2(日)14:00     宮崎 宮崎県立劇場(メディキット県民文化センター) 完売!

主催:テレビ宮崎/イープラス/日本コロムビア

 

9/8(土)14:00     新潟  長岡市立劇場 大ホール

主催:(公財)長岡市芸術文化振興財団/N S T/サンライズプロモーション東京

 

9/9(日)13:00     東京 サントリーホール大ホール 完売!

主催:日本コロムビア/イープラス/サンライズプロモーション東京

 

9/15(土)18:30     沖縄 浦添市てだこホール

主催:浦添市てだこホール沖縄テレビ/イープラス/日本コロムビア

 

 

◇サマーミューザKAWASAKI2018 日本フィルハーモニー交響楽団 音の風景~北欧・ロシア巡り

日時:2018年8月9日(木)19:00開演   完売!

会場:ミューザ川崎シンフォニーホール

 

◇軽井沢大賀ホールCLASSICS 2018 反田恭平ピアノ・リサイタル

日時:2018年8月13日(月)17:00開演

会場:軽井沢大賀ホール

「偉大なるピアニストへの思い出~中村紘子メモリアル~」

曲目       ベートーヴェン:創作主題による32の変奏曲 WoO.80

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第23番 ヘ短調 Op.57「熱情」

ショパンノクターンOp.9より 第1番、第2番、第3番

ショパン:ピアノ・ソナタ第3番 ロ短調 Op.58

 

◇読響サマーフェスティバル2018《三大協奏曲》

日時:2018年8月21日(火)18:30開演

会場:東京芸術劇場

指揮=大井 剛史

ヴァイオリン=岡本 誠司

チェロ=ラウラ・ファン・デル・ヘイデン

ピアノ=反田 恭平

メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64

ドヴォルザーク:チェロ協奏曲 ロ短調 作品104

チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 作品23

 

◇イープラス presents STAND UP! CLASSIC FESTIVAL 2018

日時:2018年9月23日(日)

会場:横浜赤レンガ倉庫特設会場 ※雨天決行

 

 

 

 

 

 

第5回 アヴァンギャルドでオーセンティックな音楽家 鈴木優人(指揮・ピアノ・オルガン・作曲)

f:id:classicportrait:20180610231533j:plain

 

クラシック界に吹く「新しい風」

 指揮者、ピアニスト、オルガニスト、作曲家。鈴木優人さんの「仕事」をひとつの言葉で表すことは不可能だ。八面六臂という言葉がふさわしい彼の活躍は、「日本の音楽界に新しい風が吹いている」ことを強く印象づける。1981年、オランダ、デン・ハーグ生まれ。父はバッハ・コレギウム・ジャパン(以下BCJ)の音楽監督をつとめる鈴木雅明氏。麻布中学校・高等学校を経て東京藝術大学作曲科に進んだサラブレッド、なのだが、自身は「音楽が無関係な人生なるという想像はしていなかったが、かといって明確に“音楽家になる”と宣言していたわけでもない」という。

 「麻布時代は管弦楽部・音楽部・テニス部の3つのクラブをかけもちしていました。もっともテニス部はすぐに止めてしまいましたが(笑)。中学3年、15歳の時に初めて演奏会の企画をしたんです。自分でメンバーを集めてオケを組織して、府中の森グリーンホールを借りて。指揮は下野竜也さんにお願いしました。この頃、指揮の勉強も始めています。とにかく音楽が楽しくて仕方がなかった時期です。」

 藝大でも、バッハ・カンタータクラブに所属したり、実に「色々楽しく」やっていたという。在学中からBCJの鍵盤奏者として演奏活動を開始。卒業時には、バッハの「ゴルトベルク変奏曲」と自作を組み合わせた「鈴木優人展」と題する演奏会で作曲家デビュー。その後オランダに留学して古楽チェンバロ演奏も学ぶ。

 

f:id:classicportrait:20180610231718j:plain

 

“安定しないことで安定する”音楽家

  「専業化反対、ってよく言っているんですが(笑)、どれかひとつに決めたくないんです。世の中には、ジェネラルに色々な仕事をこなしている人がいますが、それはとても美しいと思う。逆に、大きな会社に入ると仕事がどんどん細分化されていって、隣の人が何をしているのかもわからなかったり。そういう状態は生きている感じが減ってくるという気がします。」

 色々なことを「やってやろう」ではなく、「やってみたい」という鈴木さん。そういう音楽家としてのあり方は、バロック時代の音楽家に通じるのだと語る。

 「専業の職業音楽家というのは、19世紀に入って産業革命後に生まれたものです。それ以前、バロック時代には色々な楽器を演奏する人がいっぱいいた。もちろん、プロとしてひとつのことに邁進する良さ、というのはあります。でも、ずっと同じことを続けていくと、それが最適かどうかを判断することをやめてしまう状態になってしまって、それは音楽家としてはすごく危ない。むしろ、自分の音楽がそれでいいのかどうか、常に問い続けていたい。“安定しないことで安定する”という状態を目指しています。」

 指揮者の鈴木優人、オルガニストの鈴木優人、作曲家の鈴木優人、色々な異なった「鈴木優人」がいる、ということか。とはいえ、そのすべてが一定以上の水準どころか素晴らしい成果を上げているのが鈴木優人という音楽家の稀有なところなのだが、その切り替えはどうなっているのか興味がある。

 「その都度OSをインストールし直す、という感じです。例えば指揮者と伴奏者では、人に対する接し方から根本的に変える必要があります。というか、要求されるものが違う。だから『鈴木優人』というハードはひとつですが、OSは全部違うんです。」

 

f:id:classicportrait:20180610231908j:plain

 

「調布国際音楽祭」人が集まってつくり上げる喜び

  そんな鈴木優人さんがエグゼクティブ・プロデューサーを務める調布国際音楽祭が、今年も6月24日からスタートする。2013年、「調布から音楽を発信する」音楽祭としてスタート。年々規模を拡大し、2017年には「調布国際音楽祭」と名前を改めて新たなスタートを切った。テーマは「バッハの演奏」「アートとの連携」「次世代への継承」の三本柱。入場無料のオープニングセレモニーを皮切りに、7つのメイン公演、市民音楽家によるステージや桐朋学園大学の学生たちによるミュージックカフェなどの無料公演、またキッズコンサートもあり、たいへんバラエティに富んだ内容だ。

 「調布の街から音楽の楽しみが波のように広がっていってほしい、という気持ちでスタートしました。だから、この音楽祭は何よりも『調布らしさ』を大切にしています。例えば集客とかチケットの売り上げを優先すると、いつも同じようなプログラムが並ぶことになってしまう。そうではなくて、ここでしか聴けないものを優先して取り上げたい。今年でいえば、レイチェル・ポッジャーのヴァイオリン・リサイタルとか、深大寺で行われる寺神戸亮トリオなどがまさにそうしたプログラムです。」

 お話を伺いながら、鈴木さんの口からしばしば「たくさんの人と何かを作るのが好き」という言葉が発せられるのが印象的だった。調布音楽祭という「お祭り」が6年も続いているのも、彼のそんなキャラクターのなせるわざなのだろう。

 「そういう、“色々な才能がひとつになる瞬間”というのがとても好きなんですね。だから、指揮という仕事が大好きです。個々の目標を総体として作り上げる作業ですから。そのひとつになった瞬間っていうのは、ちょうどサーファーが大きな波をとらえた瞬間みたいなもので、その瞬間のために指揮者や音楽祭をやっているといってもいいかもしれません。」

 

f:id:classicportrait:20180610231935j:plain

 

鈴木優人のアヴァンギャルド

  最初に述べたように、鈴木優人という人は、確実に日本のクラシック界に吹いている「新しい風」だと思うのだが、ご本人としては「人がやっていないことをやりたいとは思っていない」という。確かに、BCJしかり、昨年読響と行った三大交響曲の演奏会しかり、彼が繰り広げる音楽の内容そのものは決して奇をてらったものではなく、むしろ非常にオーセンティックでさえある。なのになぜ、鈴木優人という存在からは「人とは違う」「新しい」という印象を受けるのだろう。

 「実は僕、ダダイズムがとても好きなんです。クルト・シュヴィッタースの詩『アンア・ブルーメに』なんて、もうアンナって誰なんだって感じで大好き(笑)。でも、人間の精神ってダダ的なところがあるでしょう。例えば、すごく乙女な気分の日もあれば、いきなり何かを破壊したくなる日もある。もちろん、実際に壊しはしないですけれど、何かしら波は絶対にある。僕は、そういうものを受け入れる音楽を提供したいと思っているんです。」

 人間の精神の不可解さ。あるいは不条理。だが機械のように精確ではないからこそ、人間は面白いし、愛しい。鈴木優人は間違いなく、そうした人間の不可解さを面白がっている。あるいは愛してさえいるのかもしれない。彼の音楽から生まれてくるアヴァンギャルドさの秘密をみた、気がした。

f:id:classicportrait:20180610231959j:plain

 

鈴木優人(すずき まさと) Masato Suzuki

1981年オランダ生まれ。東京藝術大学作曲科及び同大学院古楽科修了。ハーグ王立音楽院修士課程オルガン科を首席で、同音楽院即興演奏科を栄誉賞付きで日本人として初めて修了。アムステルダム音楽院チェンバロ科にも学ぶ。

18ホテルオークラ音楽賞受賞。

鍵盤奏者(チェンバロ、オルガン、ピアノ)として国内外の公演に多数出演。

指揮者としてはこれまでバッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)、アンサンブル金沢九州交響楽団仙台フィルハーモニー管弦楽団、東京交響楽団東京フィルハーモニー交響楽団、広島交響楽団、横浜シンフォニエッタ読売日本交響楽団等と共演。

音楽監督を務めるアンサンブル・ジェネシスでは、オリジナル楽器でバロックから現代音楽まで意欲的なプログラムを展開する。

 

【鈴木優人さん 出演情報】

◆調布国際音楽祭2018◆

ジョアン・ラン ソプラノ・リサイタル | 調布国際音楽祭2018

日時:2018年6月29日(金) 19:00開演

会場:調布文化会館たづくり

 

ヴェルサイユの光と影 フランス音楽の今昔 Time Travel Versaille

日時:2018年6月30日(土) 14:00開演

会場:調布文化会館たづくり

 

調布国際音楽祭フェスティバル・オーケストラ

日時:2018年6月30日(土) 18:00開演

会場:調布文化会館たづくり

 

バッハ・コレギウム・ジャパン モーツァルト:劇場支配人 | 調布国際音楽祭2018

日時:2018年7月1日(日) 17:00開演

会場:調布グリーンホール

 

 

◇九大フィル第200回定期演奏会

日時:2018年6月18日(金) 19:00開演

会場:アクロス福岡シンフォニーホール

 

◇福岡OBフィル 第40回定期演奏会

日時:2018年7月15日(日)14:00開演

会場:アクロス福岡シンフォニーホール

 

◇神奈川フィルハーモニー管弦楽団みなとみらい小ホール特別シリーズ第1回

日時:2018年7月19日(木) 19:00開演 

会場:横浜みなとみらいホール

 

◇神奈川フィルハーモニー管弦楽団みなとみらい小ホール特別シリーズ第2回

日時:2018年7月20日(金) 19:00開演 

会場:横浜みなとみらいホール

神奈川フィルハーモニー管弦楽団みなとみらい小ホール特別シリーズ第2回

 

◇珠玉のリサイタル&室内楽 鈴木優人&バッハ・コレギウム・ジャパン バッハ:チェンバロ協奏曲全曲録音プロジェクトVol.1

日時:2018年7月28日(土)15:00開演 

会場:ヤマハホール

 

◇第39回霧島国際音楽祭2018 鈴木優人チェンバロ・リサイタル

日時:2018年7月29日(日)11:00開演 

会場:みやまコンセール

 

◇バッハ・コレギウム・ジャパン J.S.バッハ生誕333周年記念特別演奏会

日時:2018年8月2日(木)19:00開演 

会場:東京オペラシティコンサートホール

 

◇九大フィル特別記念演奏会

日時:2018年8月18日(土) 14:00開演 

会場:サントリーホール

 

◇仙台フィルハーモニー管弦楽団 第321回定期演奏会

日時:2018年9月14日(金) 19:00開演/9月15日(土) 15:00開演

会場:日立システムズホール仙台・コンサートホール

 

◇バッハ・コレギウム・ジャパン 第129回定期演奏会 モーツァルト:レクイエム

 日時:2018年9月24日(月・祝)15:00 開演  

会場:東京オペラシティコンサートホール

 

◇NHK交響楽団 第1899回定期公演Aプログラム

日時:2018年11月24日(土) 18:00開演/11月25日(日) 15:00開演 

会場:NHKホール

 

◇九州交響楽団 第373回定期演奏会

日時:2019年2月12日(火) 19:00開演 

会場:アクロス福岡シンフォニーホール

 

◇鈴木 優人 チェンバロリサイタル

日時:2019年2月6日(水) 開演時間未定 

会場:第一楽器コンサートホールムーシケ

 

第4回 たぐいまれな光で周囲を照らし続ける星(スター) 宮本益光(バリトン)

f:id:classicportrait:20180320134939j:plain

 以前、東京二期会オペラ劇場『こうもり』で共演した青木エマさんが、宮本益光さんのことを「いつも面白いことを探していて、その面白いことにみんなを巻き込んでいく」と語っていた。まさに、宮本益光という「人」を的確に表した言葉だと思う。もちろん、宮本さんは「歌手」である。と同時に、彼の活動範囲はただ「歌うこと」にとどまらない。オペラの訳詞上演、コンサートの企画・構成・演出、作詞、詩や文章の執筆…。まさに「これをやろう」と決めたことを次々に実現させていく力を持っている。そんな宮本益光さんが今回、モーツァルトのオペラを上演する団体「MOZART SINGERS JAPAN」(以下、MSJ)を立ち上げた。宮本益光の新しい「面白いこと」が始まった。

 

精神的な歌劇場をつくる

 「きっかけは“焦り”です(笑) 僕は今年46歳になるんですが、去年ぐらいに“あと15年したら還暦じゃないか!”と考えたら急に怖くなってしまって…。10年前に二期会に『ドン・ジョヴァンニ』でデビューして、さてじゃあ10年後にはどれだけ歌っていられるんだろう、と考えた時に、自分に今できることをやらなければ、という思いに駆られました。僕らは『職業はオペラ歌手』と言っていますが、本場ヨーロッパのオペラ歌手たちに比べたら圧倒的に歌える場が少ない。“じゃあ、作っちゃえ!”と思ったんですね。歌劇場はないけれど、精神的な歌劇場を作ろう、と。」

 宮本さんのそんな「思い」を共有する仲間がいた。それがMSJに結集した3人の歌手と3人のピアニストたちだ。

 「たまたま、この7人は二期会オペラ研修所で先生をやっていて、僕が今言ったようなことを話したら、みんな同じ思いでいた。僕と鵜木絵里さん、針生美智子さん、望月哲也さんの4人の歌手は、全員モーツァルトをレパートリーの中心においている。そこで、モーツァルト作品を上演する団体としてMSJをつくることになりました。」

 MSJは、今後1年に1作ずつ、モーツァルトの「ダ・ポンテ三部作」と『魔笛』を、ピアノ伴奏でレコーディングすることが発表されている。実は、オペラ全曲を日本人キャストだけで演奏している録音はほとんどない。また、ピアノ伴奏、というところにも宮本さんのこだわりがうかがえる。

 「オペラでは、まずはコレペティトゥーアと呼ばれるピアニストがついて練習が行われます。このコレペティトゥーアはとても専門的な仕事で、誰にでもできるわけではありません。オペラの内容に精通していて、またその場面に応じて編曲する能力も求められる。お客様にはほとんど知られていないコレペティトゥーアという存在を広く知ってもらいたい、という意図もあるんです。」

 実際にピアノ伴奏の演奏会に足を運んだことのある方ならわかると思うが、ピアノ伴奏は音楽の線を浮き彫りにする。アンサンブルが聴かせどころのモーツァルトなら、その良さはむしろオーケストラ伴奏よりもよく伝わってくるはずだ。MSJは「ステージとピアノさえあれば、モーツァルトの極上のアンサンブルを、演技付きでも、演奏会形式でもお届けできる機動性、柔軟性」を武器にしているのだ。

 すでに、今年10月25日にオクタヴィア・レコードから『コジ・ファン・トゥッテ』をリリースすることが決定している。合わせてネット配信も予定。またブックレットには、宮本さんの訳詞もつくそうだ。

 

MOZART SINGERS JAPAN

ソプラノ 鵜木絵里、針生美智子

テノール 望月哲也

バリトン 宮本益光

ピアノ  山口佳代、石野真穂、髙田恵子

 

f:id:classicportrait:20180320135245j:plain

 

モーツァルトに魅せられて

 個人的にはモーツァルトのオペラは、すべてのオペラの中でも非常に「特別」な印象を受ける(まあ、オペラ以外の作品でもそうなのだけれど)。例えば、声楽を学ぼうとする時、最初に教わるオペラ・アリアはモーツァルトだし、若手がデビューする作品がモーツァルトである確率はとても高い。宮本さんは、モーツァルトが、「アンサンブルをを中心において物語を展開した最初の作曲家」であるという点に注目し、それが、モーツァルトがオペラ歌手のレパートリーの基礎に置かれる理由であると語る。MSJが「アンサンブルの素晴らしさ」を追求する所以でもある。

 「モーツァルト・オペラの真髄は、完成された様式美にあると考えます。モーツァルトにおいてオペラは、レチタティーヴォという様式を完成した。その後登場するドニゼッティロッシーニベッリーニの作品は、モーツァルトがつくりあげた様式美の発展型ととらえることができます。それほど完成されていながら、いえ、完成されているからこそ、逆にどうとでも料理できるのがモーツァルトの面白さです。完成された様式美があるからこそ、無限に広がることができる。ペーター・コンヴィチュニーやカロリーネ・グルーバーのような演出もできるわけです。」

 教員になろうと考えて藝大に進み、その勉強の過程で常にモーツァルトが身近にあった宮本さん。オペラ・デビューは1997年、広島市民オペラで上演された『ドン・ジョヴァンニ』。まだ大学院生の時だがマゼットを演じ、次はドン・ジョヴァンニをやりたいなあ、と思った(なんと数年後にその思いは実現するのだが)。「自分の人生の大事なときに、いつもモーツァルトがあった」という宮本さんにとって、モーツァルト・オペラは永遠のライフワークだ。

 「自分を歌手として育んだのがモーツァルトだから、ずっとそばに置いておきたいと思います。」

 

f:id:classicportrait:20180320135414j:plain

 

人を輝かせる才能

 冒頭に紹介した「いつも面白いことを探していて、その面白いことにみんなを巻き込んでいく」という宮本益光さんの特徴は、プロデューサー気質ともいえるだろう。実際、「ベートーヴェンと行くアリスのおんがく旅行」(日生劇場ファミリーフェスティバル)や黒い薔薇歌劇団など、彼が企画や構成を手がけたコンサートは枚挙にいとまがなく、またどれもが文句なく「楽しい」ものばかりだ。

 「(音楽家としての)出発点が教員になりたいという思いなので、プロデユーサー的なことは好きかもしれません。何かをつくってみんなで一緒に楽しみたい、ということが、何につけても最初にきます。」

 その「みんなで」という視線は、当然、一緒にオペラ歌手として歩いてきた仲間たちにも惜しみなく注がれている。

 「仲間の好不調をずっと見てきているから、その人たちの“今”を紹介したいという思いも強いんです。鵜木絵里のデスピーナは当代随一でヨーロッパでも通用すると思っている。だからそれを聴かせたい。同じように、針生美智子の夜の女王を、望月哲也のタミーノを…。そうしてできたのがMSJなんです。」

 

 先日私は、宮本さんが企画したホワイトデーコンサートに行ってきた。3人の後輩バリトンとともに歌うコンサートは、「とびきり甘い夜」というタイトル通り、聴いていてワクワク、ドキドキ、そして最後には涙も出てくる「とびきり素敵な」コンサートだった。人を輝かせ、そして自分も輝く舞台をつくりあげる才能。宮本益光という人の凄さはここにある。益光さん、年齢なんて関係なく、生きている限りその声で輝き、誰かを輝かせ続けて続けてください。そして、私たちに輝く音楽を届け続けてください。

 

f:id:classicportrait:20180322093143j:plain

2017年11月の東京二期会オペラ劇場『こうもり』ファルケ役を演じる宮本さん

 

 

宮本益光(みやもと ますみつ)  Masumitsu Miyamoto

東京藝術大学卒業、同大学院博士課程修了。学術(音楽)博士号取得。2003年『欲望という名の電車』スタンリーで一躍注目を集め、翌年『ドン・ジョヴァンニ』(宮本亜門演出)タイトルロールで、衝撃的な二期会デビューを飾る。二期会コジ・ファン・トゥッテ』グリエルモ、『チャールダーシュの女王』フェリ、『こうもり』ファルケ新国立劇場鹿鳴館』清原栄之輔、『夜叉ヶ池』学円、日生劇場開場50 周年記念『メデア』イヤソン、『リア』オルバニー公、神奈川県民ホール開場40周年記念『金閣寺』溝口、あいちトリエンナーレ及び、iichikoグランシアタ神奈川県民ホール魔笛』パパゲーノ等話題の公演で活躍。古典作品から現代作品、邦人作品までそのレパートリーは幅広く、コンサートでも読売日響、東京都交響楽団、東京交響楽団、日本フィル等と共演を重ねている。また演奏のみならず、作詞、訳詞、執筆、企画、演出等でも多彩な才能を発揮、創造性あふれるステージで聴衆を魅了している。CD「おやすみ」「あしたのうた」「碧のイタリア歌曲」「うたうたう 信長貴富歌曲集」、著作に「宮本益光とオペラへ行こう」、詩集「もしも歌がなかったら」「樹形図」等がある。二期会会員

 

【宮本益光さん 出演情報】

 

◇仙台フィルハーモニー管弦楽団「オーケストラと遊んじゃおう!Vol.15」

日時:2018年4月8日(日)11時/14時30分開演

会場:日立システムズホール仙台 コンサートホール

  

◇神奈川県民ホール みんなで楽しむオペラ『ヘンゼルとグレーテル』

日時:2018年6月3日(日)11時/14時開演

会場:神奈川県民ホール 大ホール

 

◇水戸芸術館 「ちょっとお昼にクラシック」

日時:2018年6月17日(日)13時30分開演

会場:水戸芸術館 コンサートホールATM

 

◇神奈川フィルハーモニー管弦楽団 

 定期演奏会 県民ホールシリーズ第1回「Mozart Gala Concert」

日時:2018年7月14日(土)15時開演

会場:神奈川県民ホール 大ホール

 

 

 

新国立劇場2018/19シーズンラインアップ説明会

 新国立劇場の次のシーズンのラインアップを、オペラ・舞踊・演劇それぞれの芸術監督が説明する会見は、140人あまりの出席者を数えるたいへん盛大なものでした。オペラに大野和士、演劇に小川絵梨子という2人の新しい芸術監督が登場することも、盛況の理由だったかもしれません。

 オペラの2018/19シーズンラインアップ詳細はこちら

 ここでは、大野和士次期オペラ芸術監督のお話をまとめて報告したいと思います。

 

f:id:classicportrait:20180112210256j:plain

大野和士次期オペラ芸術監督

 

 大野次期監督は5つの目標を掲げました。

1)レパートリーの拡充

 現在、1シーズンに上演される演目は10あり、そのうち新演出は3演目だが、それを4演目に増やす。新国立劇場はこれまで20世紀作品などを積極的に取り上げてきたが、そのほとんどがレンタルなので再演ができず、劇場の財産にならなかった。そこで、これからは、まず新国立劇場世界初演を行い、それを海外へ持っていくというスタイルを常態化させたい。また、海外で上演されているプロダクションを導入するにあたっては、上演権を買い取って、好きな時に再演できるようなシステムを作りたい。

 

2)日本人作曲家委嘱作品シリーズの開始

 1シーズンおきに、日本人作曲家に委嘱した作品を上演する。音楽劇の本質は、ある時間の中で様々な人間の感情が重層的に錯綜していくということ。これまでの日本のオペラ作品にはなかった、重唱によってオペラティックな展開を見せるような作品を作りたい。そのためには、作曲家・台本作家・演出家・芸術監督が綿密に協議を重ねていくことが必要。こうした新しい日本のオペラを世界に発信していきたい。

 

3)ダブルビルとバロック・オペラの新制作を1年おきに上演する

 1幕もののオペラを2作上演するというダブルビルは一粒で2度美味しい。18/19シーズンはツェムリンスキー『フィレンツェの悲劇』とプッチーニ『ジャンニ・スキッキ』を上演。バロック・オペラのピットには東フィルと東響を考えている。

 

4)旬の演出家・歌手の起用

 例えば、18/19シーズン『魔笛』で招聘するウィリアム・ケントリッジは独特のポエティックな舞台を創り出す新時代の演出家。そうした新しい時代を代表する演出家を積極的に招聘していく。また、海外から招聘する歌手に加え、重要な役で日本人歌手を起用する。誇るべきレベルにある日本人歌手を起用することは新国立劇場の重要な使命だと考える。

 

5)積極的な他劇場とのコラボレーション

 海外の劇場だけでなく、日本にある様々な劇場ともコラボレーションをしていく。手始めに、2020年東京オリンピックパラリンピックに向けた「オペラ夏の祭典」では東京文化会館びわ湖ホール・札幌文化芸術劇場との連携を行う。

 

f:id:classicportrait:20180112212550j:plain

 

 大野次期監督のお話の中で、特に印象に残ったのは、日本人歌手を積極的に起用していく、ということでした。ずっと私は、新「国立」劇場なのに、重要な役はすべて外国人で、日本人歌手が(言葉は悪いですが)チョイ役しか与えられないことに不満を感じていました。素晴らしい実力のある歌手を海外から招聘することができるのも「国立」ならではだと思いますが、日本人歌手の成長を手助けするという意味でも、もう少し板の上に乗るチャンスを与えてもいいのではないか、と思っていました(もちろん、きちんとオーディションを行うなどしてレベルを確保することは大前提ですが)。なので、「重要な役で」日本人歌手を起用するのは大賛成です。

 この件に限らず、大野さんの言葉からは、「日本のオペラの新時代をつくる」という情熱と責任が大いに感じられたのが特徴的でした。世界の歌劇場でタクトを振る大野さんだからこそ、世界の中での日本のオペラ界の位置というものを肌感覚でとらえているのでしょう。オペラは「人間がいかに生きていくかという哲学」を表現する芸術だ、という大野さんは、「この国が今おかれている状況を考えても、この課題に日本は取り組むべきだし、また私の年齢はそれに取り組むことができる最後のチャンスだと思う」と語りました。今年58歳を迎える大野さんが新国立劇場の芸術監督というポストを引き受けられた一番の理由がここにある、と感じました。

 

 「新しい日本のオペラをつくり、世界に発信していく」という壮大な目標の第一歩として、まず次シーズンに上演されるのが、石川淳の原作による『紫苑物語』。平安時代を舞台に、歌の名家に生まれた宗頼という男性を主人公に、狐の化身である女性・千草との愛や、瓜二つの姿を持った仏師の平太との出会いを通して、芸術の永遠性や人間の我執を描く幻想的な物語です。大野さんは、西村朗に作曲を、佐々木幹郎に台本を依頼。そして演出は、現在日本人オペラ演出家として世界的に名高い笈田ヨシを迎えることが決まっています。

 確かに、壮大でありながら人間の本質に迫るドラマが生み出される予感がしますが、個人的には一点、どうしても気になることがありました。それはこの、いわば「大野新体制」を象徴する作品の原作、作曲、台本、演出、美術、衣裳、照明、監修、そして主役(いうまでもなく指揮も)すべてが男性であるこということです。むろん、芸術の才能に男女の別はありません。ありませんが、「世界に発信する新しい日本のオペラ」を創り上げるグループがすべて男性で占められているという状況は、なんとも歯がゆいというか、モヤモヤしてしまいます。それは図らずも、ジェンダーギャップ指数が世界114位という現在の日本社会の見事な反映になってしまってはいないでしょうか。大野次期監督には、ぜひ、「オペラにおける男性と女性」というテーマにも目を向けてもらえたら、と思います。

 それはともかくとして、これまでにない新しい光を感じたラインアップ説明会だったことは間違いありません。次のシーズンを楽しみに待ちたいと思います。

 

f:id:classicportrait:20180112215630j:plain

左から 小川絵梨子次期演劇芸術監督、大野和士次期オペラ芸術監督、大原永子舞踊芸術監督

 

2018年1月11日、新国立劇場にて。